この想いの行方を
         追ってはならない―




女神の翼の意味を持つ大陸―セレマイト大陸。
かつてこの大陸には、ラビエス帝国という巨大な帝国が存在していた。
しかし帝国は宗教的対立により、数々の戦争の末に二国に分裂。
新教国ノルディア帝国と旧教国スブニール王国。
二国の関係は当然良好ではなく、その後も長らく冷戦状態が続いた。


ラビエス帝国の崩壊から四百年。
新興国バルスィーム、ケンティフォリア王国が建国され
大陸では、四つの国がお互いに牽制し合う状態が続いていた。
ノルディアとスブニールの外交は再開されたものの、打算的なものだった。

しかしその歴史は、一人の女性によって幕が引かれる。
スブニール王家に生まれた王女マカレナ。
彼女は両国の友好関係の為、異国の地ノルディアに嫁いだのである。
ノルディア皇帝とスブニール王女との婚姻に、多くの民が期待を寄せた。

だが新風を巻き起こした皇帝と皇后の時代は、長くは続かなかった。
皇帝と皇后の相次ぐ病死。そしてその後に続いた皇室の醜聞。
これにより、二国の不和は覆しがたいものとなった。

それから二十年。
急速に崩壊へと向かうノルディア帝国には、一輪の薔薇が咲いていた。
ノルディアの薔薇の異名をもつ美しきその女性こそ、
かつての新時代を築いた皇帝と皇后の血を継ぐ皇女であった。

腐敗する帝国の中で鮮烈な存在感を放つ皇女。
人を惹き付ける力を持ち過ぎる故に、多くの混乱と変化をもたらす一人の女性。

彼女の想いはやがて、セレマイト大陸全土を揺るがす運命の輪を回す―


果たして正しきは神か人か。
神を前に人の意志は勝ち得るのか。
数々の試練の先に明らかになる、古から隠されてきた真実とは。


全ての答えは『薔薇の下』に